OPEN GATE 2016 もう絶対来て体験してほしいなあ

2016.10.08

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いや~、面白い。実に面白い。もう最高過ぎて、どう書いていいかもわからないくらい興奮している。Sachiko Mのディレクションによる「OPEN GATE 2016」がオープンした。

OPEN GATE 2016 〜動き続ける展覧会〜 「音楽と美術の間を屋上で彷徨う」@ 岡崎市

会場は岡崎市にあるデパート「シビコ」の屋上。「あいちトリエンナーレ」の出品作品であると同時に、わたしがディレクターを務める国際交流基金アジアセンターの「ENSEMBLES ASIA」が主催の事業でもある。といっても、わたしは内容のディレクションをしているわけではない。今回は、あくまでも一出演者としての参加だ。

2015年6月、マレーシアのペナン島で始まったこの企画、今回は二回目になるわけだけど、前回とも、また全然違う。それどころか、今日でオープン二日目だけれど、初日と二日目でも、まったく違う。みなの出す音が、ばらばらのまま、街の音、風の音とも溶け合い、ときにかき消されながら、前回のトリエンナーレで真っ白に塗られた巨大なデパート屋上や岡崎の街の景色のなか沈みゆく夕日とともに、数え切れないほどのレイヤーを僕らに見せ聴かせてくれる。そこには全体を支配するビジュアルも音もない。同時に、様々な場所で、様々なことがどんどん起こる。どこで何が起こっているかを全て把握することは完全に不可能だ。会場に居た人100人が、文字通り100通りの異なる経験をすることになる。わたしにとってみれば、これこそが理想的な空間、最高の祭りの場だ。

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OPEN GATE 2016 / photo: Yusuke Watanabe

そもそもの始まりは2014年、アジアン・サウンズ・リサーチのディレクターを務めることになったSachiko Mに音楽とも美術ともつかないような、でも音に関わるような作品なりを作っている作家をアジアで見つけ出して、同様の志向を持つ日本の作家たちと交流の場を作れないかと相談したことにはじまる。音楽とも美術ともつかない、しかしその両方に確実にまたがるような創作を長年にわたりやってきたSachiko Mだからこそ出来た依頼だった。

その後数ヶ月のリサーチを経て、彼女が選んできたのがペナン島のヒンバス・アートデポットという半野外のアートスペースで、ここで彼女がディレクションしたのが、美術家や音楽家、あるいはサウンドアーティストが半月の間、連日作品を作り続け、それを改変しつづけ、同時にパフォーマンスもそこに介入してくるという「動き続ける展覧会」という概念だった。

そこには作品を完成させるという目標はない。今ある状態が全てであり、それは常に変化し続ける。これって、かつて音楽の世界でディレク・ベイリーが提唱した即興演奏の概念と良く似ている。ただし即興演奏がどんなに長くても数時間以内には終わるのに対し、「動き続ける展覧会」には終わりがない。会場の関係や、人間は休まなくては死んでしまうという関係で、一応オープン時間と閉館時間はあるけれど、でも、展覧会そのものは延々と変化しながら続いていく。美術によくある複数の人間の作品によるグループ展とは違い、個々の作品を隔てるつい立もなければ、通常の音楽の会場のように、外の音の侵入を防ぐ防音の壁もない。個人の作品を何にも邪魔されずピュアに鑑賞する・・・そんな発想は皆無、現実の中に作品は対峙し、共演者とも、フレキシブルにアンサンブルを組みながら、美術的な作品も互いに関連し介入し合い、音楽のようにアンサンブルするし、逆に音楽のパフォーマンスが、インスタレーションのようにも機能する。

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Adam Kitingan / photo: Yusuke Watanabe

わたしはオープンしてから10日後にペナン島の現場に入ったけれど、会場に入った瞬間の静かな興奮は今でも忘れられない。外から聞こえて来る街の音も、米子匡司が作った音の出るオブジェの音も同等に鳴り響き、そこにビジュアルの作品が、個人の作品としてではなく、建物の造作や、もともとそこにあったグラフティ的な作品とともに、渾然一体となって、互いを支配することも、同期することもなく、しかし互いに許容しながら同じ場でしっかりと共存し、重層的にアンサンブルしているのだ。従来の芸術作品のあり方とは、根本的に異なる風通しの良さ。しかも、ただ垂れ流すのではなく、そこには、ある種のマナーというか他者と共存しあう仁義というか、そういう繊細なものが、作品の根本にちゃんとあるのだ。これまでにない、新しい何かが始まりだしたぞ・・・そう思っての興奮だった。こんな素敵なこと、日本でもやれたらいいなと思っていたら、早々に「あいちトリエンナーレ2016」が手をあげてくれて、今回の開催となった。

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Chi Too / photo: Win Win

ここにあげた写真を見てほしい。何が起こっているのか、これだけじゃわからないかもしれないけど、でもこの会場での2日間はミラクルの連続だった。といっても人類が100mを9秒で走るようなミラクルじゃない。どっかの偉い人がCGで地球の裏側に行くような時代に、たまたま吹いた風が竹を動かして出る音と、空から聞こえてくる飛行機の音、そして電池仕掛けで振動し続けるバンジョーの弦が生み出すほんの数秒のハーモニーを発見したり、マレーシアから来たチ・トゥが仕掛けた風でたなびきつづけるシルバーの広大なオブジェの出す音にかき消されながら聞こえて来る鈴木昭男さんの奏でる微細な音や、アダム・キティンガンの微音楽器の音、さやのかすかな声のアンサンブルを聴きとった時の興奮をミラクルと言わずして、なんと表現したらいいんだろう。今日から参加したカンボジアのスヴォイ・サレスのドラム缶を使ったパフォーマンスも、ほんと素晴らしかったなあ。

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SVAY Sareth / photo: Yusuke Watanabe

開催は10月10日まで。あと3日間、「動き続ける展覧会」がどう変化し続け、どんなミラクルを見せくれるのか、聴かせてくれるのか、今からでも、もし都合がつくようなら、ぜひぜひ、会場まで足を運んでほしいなあ。一出演者にすぎないわたしが何でここまで興奮しているか、きっとわかってもらえるはずだ。

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OPEN GATE 2016 / photo: Win Win

追記)  っていうか、もう我慢できないので、正式な公開を待たずにフライングで言ってしまうけど(事務局のみなさんすいません、勘弁してください)、実はこの「OPEN GATE」札幌国際芸術祭2017でも、ぜひぜひやりたいと思っていて、その思いは、この岡崎で確信にまで変わって、なのでその実現のために、動き出したところだ。岡崎のシビコの屋上にも負けないような、素敵な空間、札幌でも見つけたいなあ。ペナン、岡崎、そしておそらくは、この先アジアのどこかをへて、札幌へという流れ、つくれないものだろうか。今はまだ岡崎のことでいっぱいいっぱいだろうけど、これが終わったらSachiko Mさんにも札幌に来てもらい、ぜひ2017年の「OPEN GATE」に向けて動いてほしいと思っている。

尚、今回の「OPEN GATE 2016」開催と同時に、ペナン島での「OPEN GATE」の写真集が発表された、現在岡崎会場にて限定販売中。現在毎日撮り続けている写真も同じく写真集になる予定、記録映像も続々とAsian Sounds Researchの特設サイト上で更新されていきます。

Asian Sounds Research Presents
OPEN GATE 2016
~動き続ける展覧会  An ever-changing exhibition

展覧会とサウンドパフォーマンスの間のような、そのどちらでもないような事を10月6日~10日の5日間限定で行います。
会場は15時よりオープン、パフォーマンスは日没前後、17時頃からゆるやかにスタートする予定です。
岡崎の街を見渡せる夕日が綺麗なシビコ屋上での開催です。
みなさまのご来場を心よりお待ちしております。

http://www.soundsresearch.com/open-gate-2016

会場:岡崎シビコ屋上/愛知県岡崎市康生通西2-20-2
日程:2016年10月6日[木]~10日[月・祝]
時間: 15:00 – 19:00
サウンドパフォーマンスは毎日17:00頃にスタートします。
5日間パス:1,000円
*公演期間中、岡崎シビコにて発売
*期間中有効、ノベルティ付き

■参加アーティスト
chi too (チ・トゥ:美術家 クアラルンプール/マレーシア)
SVAY Sareth (スヴォイ・サレス:美術家 シェムリアップ/カンボジア)
Adam Kitingan(アダム・キティンガン:美術家 コタキナバル/ マレーシア)
Win Win (ウィンウィン:写真家 ペナン/マレーシア)
米子 匡司(音楽家)
水内 義人(現代美術家)
植野 隆司 (音楽家)
さや (音楽家)
鈴木 昭男 (サウンドアーティスト)
相川 瞳 (音楽家)
上原 なな江 (音楽家)
大友 良英 (音楽家、アンサンブルズ・アジア プロジェクトディレクター)

■キュレーション&ディレクション
Sachiko M (アジアン・サウンズ・リサーチ プロジェクトディレクター)

*パフォーマンスは各日内容、参加者共に変更、更新されていきます。
*雨天開催、荒天の場合は要問い合わせ、各日定員200名

大友 良英
大友 良英
札幌国際芸術祭2017ゲストディレクター
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