さっぽろコレクティブ・オーケストラ第2回ワークショップ 2日目 8月10日レポート

2016.10.07

さっぽろコレクティブ・オーケストラ プログラムディレクター 有馬恵子さんから、第2回ワークショップのレポートを頂きましたのでご紹介します。


プロローグ
ワークショップ前夜 その2

ワークショップ前夜8月8日深夜、「ゲームするよね」のほかに、実はもうひとつ、メッセージではなく電話でひそかにやりとりしていた。「大友さんの誕生日8月1日だったんだよ。」「あー、そうか」「崎陽軒のシウマイ(一般的なシュウマイのこと。関東圏の方にはなじみが深い)を探してる。大友さんの誕生日祝いだから」「え?シュウマイ?!」なんでシュウマイなのかを聞いたか聞かなかったか覚えていない。でも「崎陽軒のシウマイ」である、ということは、あらかじめ決まっているようだった。
大友さん、石川さんはこの日の夜、ハンバーグ専門店で、ハンバーグ2個、ごはん大盛りをたいらげ、そのあと、さらにパフェ専門店(札幌では「シメパフェといって食事のシメにパフェを食べることが流行しています」で、フルーツ・パフェと、ベジタブル・パフェをそれぞれ平らげて、もうこれ以上は何もいらない、という状態なのだった。

おまけにシウマイ単体はすでに売り切れだったらしく結局「シウマイ弁当」を5個も羽田空港で買い占めていた。到着早々、大友さんに見つからないように、そのシウマイ弁当を、ロビーに置いてあった、チラシを立てるラックに、5個並べて、椅子で隠して見えないようにして、と、マームチームの指揮のもと、シウマイ弁当にこまやかな演出がほどこされる。そしてゲームが佳境にさしかかった深夜2時、わたしたちは「ハッピー・バースディ」の歌とともに、大友さんにそのシウマイ弁当を、差し出したのだった。「こんな夜更けにシウマイ弁当かよ」とは、もちろん誰も言わなかった。
大友さんは「シウマイ弁当」のサプライズ、どうだったんだろう。

8月10日 ワークショップ2日目

出だしがとても長くなってしまったけれど、2日目のワークショップのことを。
2日目も70名以上の小中高生が集まり、この日は写真家の石川直樹さんを講師として迎えた。
「音楽のワークショップですよね。なんで石川さんですか」というのは、口に出したり、出さなかったりは、人それぞれだけれど、それなりに疑問に感じられていることだと思う。
そもそも、舞台のプロセスで石川さんに入ってもらうということは、8月9日のレポートで言及している福島で中高生と制作したミュージカル「タイムライン」でおこなったことだ。石川さんが参加するのは、当初は予定していなかったことだけれど、ミュージカルのプロセスで、参加しているこどもたちの「日常」を写真で記録して、演出で使ってはどうか、ということになり、石川さんにお願いすることになった。いちばん意外でおもしろかったのは、演出はもちろんのこと、結果、演出を担当した藤田貴大さんよりも、音楽を担当した大友良英さんよりも、石川さんが参加したこどもたちと最も近い距離にあった、ということだ。参加者の朝の登校、学校、下校、家、さまざまな場所に入り、コミュニケーションする、それは写真を通してのことだけれど、確実に参加者のこころをつかんでいたし、石川さんも心をつかまれていたように思う。そして写真を撮ることで縮まった石川さんとこどもたちとの距離感が、そのまま福島県のいろいろな場所から集まってきたこどもたちの距離感を縮めていた。

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2日目も「じゃけんゲーム」を試した。
(じゃんけんゲームについては8月9日のレポートも参照してください)

1日目の晩に大友さんとじゃんけんゲームを振り返って、いくつかの点を修正していた。それぞれのグループで考えた「グーチョキパー」の3つのサインを、グループごとに発表してもらうときに、その都度おもしろい音を「これおもしろいね」と、大友さんが伝えるというとてもシンプルなことだ。「いいね」と伝えることで、調子にのせるというか。
じゃんけんゲーム開始。1日目とはまた違うグループにそれぞれわかれて考える。1日目の経験があるからなのか、みんな盛り上がっている。そして10分後に発表。身体をたたいて音を出したり、床をたたいたり、ワーっとさけんだり、こなれてきたからなのか、1日目以上に、たくさんのゆたかな音をそれぞれのグループが発表する。7つのグループで21通りの音、昨日もあわせると、42通りもの音が、生み出されたことになる。これはちょっと考えつかないな、という音もいろいろとある。
じゃんけんのなかで、みんながアイデアを出し合い、ゲーム感覚で音を考えていくというのは、イケる方法なのではないか!じゃんけんでみんなが考えた音をストックしてゆこう。

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そしてこの日のメインイベント、石川さんの「お話の時間」がはじまる。会場を暗くしてプロジェクターで写真を投影する、これまでにない雰囲気にみんなわくわくしているようだ。石川さんの中学時代の旅の話や、はじめてインドを旅したときのこと、デナリというアラスカの山にはじめて登った20歳のころの話、エベレストの話、みんな興味津々で写真に見入りながらお話を聞いている。
石川さんのお話のあとの「質問」がとてもおもしろかった。「牛さんはなんでそれ以上、山に登れないんですか?(荷物を運ぶヤクが山の頂上には登れない、という話をうけた質問)」「牛さんが運んでいるドラム缶には何が入っているんですか」など、たくさんの質問がとぎれることなく飛び交う。見たものにこんなに素早く、ぱっと反応できるというのは素晴らしいことだ。あらためてこどもたちの反射神経と視点はすぐれていると思う。そして何より知識を積んだおとなでは、もうみえない世界を想像することができる。その感性にわたしたちがおいてきぼりをくらわないように、瞬時にとらえてゆきたい。その先に、ここでしか生み出せない豊かな音の世界が見えてくるように思うのだ。
こどもは特に低年齢ほど「見たこと」にそのまま反応して「言葉」に置き換える能力に長けているように感じた。経験や知識が少ないので、感覚的に、見たものを受け止めるからなのだろうか。
知らない世界を「見る」ということを、こどもに体験してもらえたことは、とても良かったように思う。聴く、に加えて、見るというプロセスを音楽に入れることで、思いもよらない発見があり、寄り道があり、オーケストラをゆたかなものにするのではないかと考えている。
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