さっぽろコレクティブ・オーケストラ 第2回ワークショップ 初日8月9日レポート

2016.08.31

さっぽろコレクティブ・オーケストラ プログラムディレクター 有馬恵子さんから、第2回ワークショップのレポートを頂きましたのでご紹介します。

文中の写真はすべて石川直樹さん撮影です。


プロローグ
ワークショップ前夜 その1

夜更けのカードゲーム

ワークショップ開催前日の8月8日、羽田発の最終便で藤田貴大ほか藤田が率いる劇団マームとジプシーの成田亜佑美、召田実子が到着。東京で、東京で、飛行機に乗る直前、そして着いてからも「今日ゲームやるよね?(藤田)」のLINEメッセージ。「今日ゲームやるの?(大友)」「もちろん、やります(有馬)」「え、マジでこれからやるの?(石川)」「あと15分で着きます(成田)」「たぶんもう着きます(成田)」とメッセージがゆきかう。
深夜0時を過ぎて受付の人もいないホテルのロビーで、大友良英、石川直樹、有馬と合流しそのまま、まさかの深夜ミーティング、ではなく、今日のために藤田が厳選した「カードゲーム」を詰め込んだかばんからいくつかのゲームを取り出す。
「こんな夜更けにゲームかよ」という突っ込みは私たちには、ない。
そう、なにせワークショップは明日。その前にゲームがないことには始まらないのです。いったい、なぜ?

8月9日(ワークショップ初日)

札幌には珍しく30度を超えた8月9日、夏の集中ワークショップ、初日を迎えました。食の都札幌に来たというのに、コンビニでお弁当などを買い込んで、会場の資生館小学校に向かいます。50名の定員なのに78名もの応募があって、嬉しい悲鳴。受付時間を早めたから、ごめんね。という言い訳もそこそこに、すぐに会場の設営確認、とそうこうしていると、開場の時間に。
想像はしていたけれど、70人ってすごい人数。でもさすがプロフェッショナル!芸術祭事務局の細川秀樹さん、佐々木丈英さんと吉田亜希子さんが、てきぱきと、丁寧にさばいてくださいます。

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そしていよいよスタート。ワークショップ初日は、藤田貴大がゲスト講師、そしてマームとジプシーの俳優、成田亜佑美と召田実子がアシスタントとして参加します。札幌からは、木野哲也、アーティストでマレウレウのメンバーでもあるまゆんも、加わります。そして音楽を引っ張るのは大友良英。豪華なメンバーですね。

全員で音を出さないとはじまらない!という大友さんのかけ声のもと、まずはみんなで音を出します。70人がいっせいに出す音ってすごい!
そして即興の演奏がはじまります。ここでの即興の演奏というのは、いくつかの決められたサイン(指で出すジェスチャー)にあわせて音を出していくことで、楽譜や決められた音というのはなく、各自が自分の判断で音を出します。音の重なりのなかで、ある瞬間にグルーブが生まれては、消え、そしてまた生まれ。音の固まりがその集団の音といえる個性をつくっています。

「グルーブ」というのは「気持ちいいな」って感じる音の重なりのことだと思います。各自が好きに音を出しても、グルーブは生まれなくて、自分の音と、そして人の音が聞けるようになって、生まれていくものだと思います。そしてそれは単純な和声ではなくて、もう少し身体的な感覚に近いというか、その場で音を共有している面白さや体験も込みでみんなが感じる気持ちよさだと思います。「Don’t Mean a thing if it ain’t got that swing (スイングしなきゃマジで意味ないよね)」という曲がデューク・エリントンにありますが、ここでの「スイング」と同じことですよね。みんなでやるときに、自分の音、人の音を聞いて、音楽と身体が一体になること。そしてもちろんどの瞬間が気持ちいいかは人それぞれなのです。今回のオーケストラの中で、これからたくさんのグルーブが生み出されると思っています。

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さて、これからが昨日の深夜3時までゲームをしながらわたしたちが考えていた最初のゲーム。「じゃんけん」で音を生み出して行くという音楽の実験です。
有馬からの提案は、10人ずつ、7つにわかれたグループのそれぞれで最初にじゃんけんして勝った人が「コンダクター」になる。そして全員で3つの「音のルール」を考える。そして、いっせいにそれぞれのグループが1、2、3の3つのサインをつかって即興演奏する。そのあと「きっかけ」という役割を持った人が出てきたら、すべての演奏が終わり、「きっかけ」だけのソロの演奏になる。そして、それぞれの班からひとり「みちづれ」を選んで、そのみちづれと、きっかけとで、セッションする、というものでした。
この「じゃんけん」の要素を深めたのが藤田。じゃんけんの「グーチョキパー」を、サインにする、つまりグーの音、チョキの音、パーの音をそれぞれのグループで考えてはどうか、ということになりました。それだ!ということでまずは、じゃんけんをつかった即興演奏を試してみることに。

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まずはリーダーを決める大じゃんけん大会のはじまりです。すぐに勝ち負けが決まる班もあれば、ずっと決まらない班も。
「10分で考えてくださいね」
各班でわかれて、グーチョキパーの音を考えます。はじめてのグループワーク。小学生から高校生、男女混合。みんなはじめての体験です。ちょっと厳しいかな、というグループもあります。行ってアドバイスしたいのをぐっとこらえて、あくまでも参加者同士にゆだねます。こういう場に大人が乗り込んではだいなしです。みんながんばれ!
そして10分がたって、いよいよ、各班のグーチョキパーの発表です。
グーの音、チョキの音、パーの音を各班で発表します。なるほど、みんなそれぞれ、違う音が生まれています。これだけで21通りもの、音のルールが生まれている!自分たちで考えた初めての音です。発表後はみんな大拍手。
そのあとは、各グループ一斉に、そのグーチョキパーの音を演奏します。まだぎこちなさはあるけれど、グーチョキパーのゲームを即興でまずは演奏しました。
じゃんけんで音楽を構成してみるという実験。いろいろと修正すべきことはあるけれども、手応えが感じられて、まずは、よかったかな。(じゃんけんについての詳細はまた 後日のレポートに。)

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ワークショップはまだまだ続きます。そのあとは、前回のワークショップで試した「歩く」リズムに音をあわせていくという即興。これは藤田さんが福島で大友さんが言った「どんな人にもリズムはある。歩けない人はいないでしょ」という言葉に触発されて、考えました。小学生が歩く音にあわせて、中高生が音をつけていきます。そして最後はまた全員の即興演奏で締めくくりました。

エピローグ

ワークショップが終わって、藤田ほかマームチームは空港に向けて出発する。すぐに公演を控えているので、最終便から一本前の便で東京に戻らなければならないのだ。深夜のゲームでの会話がとても充実したものだったから、私たちはとてもほっとしていて、また次に向けてのゲームを考えはじめている。そしてゲームを音楽に置き換えることについて、考えはじめている。

大友良英と藤田貴大は福島をきっかけに出会い、中高生と1年間をかけてミュージカル「タイムライン」をつくった。プロジェクトはいまも続いている。そして今回の札幌では、ミュージカルではなく、オーケストラを考えている。

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*文章のなかで不自然にならない程度に敬称を略しています

事務局
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