「デザインプロジェクト」ってなんだ?

2016.05.05

こんにちわ。SIAF2017スペシャルビッグ・バンド、バンドメンバーの佐藤直樹です。バンドというのは企画チームのことですが、普段は「アートディレクター」と呼ばれる仕事に関わっていることが多く、SIAF2017では「デザイン」を主として担当します。

企画チームの外にいて「アートディレクションはお任せください」「かっこよくデザインしまっせ」というスタンスもあっていいわけですが、なにしろSIAF2017のテーマが「芸術祭ってなんだ?」ですから「芸術祭のデザインってなんだ?」も企画に入ってきてしまうわけです。「しまうわけです」なんてちょっと消極的に聞こえるかもしれませんが、そうではなくて、そこを積極的に考えようとしています。そんなわけでバンドメンバーに加わらせていただきました。よろしくお願いします。

最初なので自己紹介めいたことから始めさせていただいてよろしいでしょうか。異論の声が聞こえないので続けます。じつは私、今は東京暮らしをしていますが、北海道教育大学で学びましたもので、北海道とは浅からぬ縁があります。北海道教育大学の札幌校ではなくて旭川校なんですけど。なんで旭川かというと「へき地教育」を実地的に学びたくて進学したからです。だもんで、私にとっての札幌は、北海道の他の地域との関係によって浮かび上がってくる、そういう場所です。私の学生時代はまだ夕張や赤平などの炭坑も閉山前でした。

北海道の前は生まれてから11ヶ所を転々としており、幼稚園2つ、小学校3つ、中学校2つに通っていましたので(高校は越境通学できたので1つですけど)、定住するという発想が育たなかったってこともあるんでしょうし、また、だからかどうかはわかりませんが、あまり多くの人が行こうとしない場所が好きでした。北海道に渡る直前はディズニーランドのできる前の浦安に住んでまして、学校をサボっては誰もやってこない広大な埋め立て地の突端あたりで一人のんびり過ごしていたりしたのです。

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場所を転々としているとどこに行ってもどこの人とも仲良くしなければならないので、どうしたって社交的にならざるをえません。でも世の中にはできるだけ社交しないで生きたい人もいるわけで、行く先々で魅かれたのはむしろそういう「ほっといてくれ」という人間だった気がします。

そんな私が、どういった経緯で「へき地教育」に挫折しデザインの道に入ったかは話が長くなり過ぎるので飛ばすとして(すんません、またいつか機会がありましたら書かせていただきますが)、入学希望に至った美学校の赤瀬川原平考現学教室の最後の年に北海道を離れ、同じ美学校の菊畑茂久馬絵画教場にその翌年から通い始めたことはちょびっとお伝えしておきたい部分です。山本作兵衛さんの炭坑画に早くから着目していたのが菊畑さんで、作兵衛さんの作品が日本初のユネスコ記憶遺産に登録されたのは2011年のこと。同年に始動したプロジェクト「FUKUSHIMA !」の存在がなければこの文章が書かれることもなかっただろうと考えると、じつに不思議な巡り合わせのようなものを感じます。

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今回「ワークショップを通じて」とか「共同作業として組み立てていく」とか「過程を重視する」とか「学習と実践の機会となることを目指し」とか言ってますが、それは「その方がいいデザインになりそうだから」ではなくて、逆に「その方がデザインするのが難しそうだから」なんです。「一人のデザイナーが統括的にデザインし、その他大勢がその成果物を受容する」という構図だと、いかに優れたデザインになったとしても、芸術祭のデザインとしてはあまり楽しそうじゃないなということをまず思いました。

それからもう一つ。デザインというのはどこまで広げてもその先には「ほっといてくれ」という人がいます。そしてそういう人の目にも入って行きます。ある意味で大変に暴力的な力を持つものです。今はそのことを自覚するための「場」を持つことが必要な時期じゃないか。つまり異なる価値観が交差する「場」ということですが。そういう「場」をつくる模索自体が今とこれからのデザインにとって重要になるだろうという仮説を立てているわけです。

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それで4月24日に「第1回SIAFデザインミーティング」を行いました。まずは私の方から「デザインプロジェクト」の説明を行い、札幌で活躍中の工藤“ワビ”良平さんと上田亮さんに「札幌のデザイン─これまでとこれから─」の話をしていただき、来場していただいた方々とも直接お話しました。最初の一歩という感じです。次回は5月21日に街歩きのワークショップを行います。芸術祭の来場者はどんな風景を目にするのか、ポスターはどこに貼られるのか、等々シミュレーションしながら街を歩きます。その翌日には主にデザイン関係者を対象とした実装のための意見交換会も行います。もろもろ別途記録を残しますが、機会が持てたらまたここでも報告しますね。

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以下はデザインミーティングで使用したメモですが、ごく大雑把に説明しますと、SIAF2017のデザインプロジェクトには「Design for SIAF」と「Design through SIAF」の2つの視点があり、前者は芸術祭のためのインフォメーションとしてのデザインの役割、後者は芸術祭を通して獲得していきたいデザインの軸みたいなもの、で、キーワードとして「動的インフォメーション」としたのは、二つの視点からあらためてデザインをテーマ化しておかなければならないだろうという前提の上、事前に用意した静止物でいいわるいどうこうは言わないようにして、街や人にどう揺さぶりをかけるか、いかに巻き込むか、そのためにできることを考えるところから始めようと。他所のデザインをここに持ち込むような順序で考えるんじゃなくて。つまり現場主義ですね。しかしその現場がまた多様であると。そうなると具体的な局面を想定したアイデア出しが重要になりますが、「同じ」という感覚は形とか色とか揃えなくてもつくれるのでそのチャレンジもしたい。全体の「統一感」ばかりを狙うんじゃなく(とはいえある程度のルールをつくらないとSIAFという括りすら見えなくなってしまいますが)、いくつもある価値観の交差を念頭に置きつつのSIAF2017らしさを探りたい。といったことの確認のために書きました。記述のための記述をしてしまうとデザインの運動が止まるので、そういうことはしません。あくまでメモです。そんなわけで、次回のワークショップではさっそく「具体的な局面を想定したアイデア出し」のために街へ繰り出します。

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佐藤 直樹
佐藤 直樹
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